Linuxで使える音声入力ソフト9選(2026年):なぜ認識できているのに文字が入らないのか

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お使いのデスクトップに音声入力は組み込まれていません。GNOMEにもKDEにも、今日インストールできるどのディストリビューションにもありません。これは変わりつつありますが、まだ変わっていません。代わりに今すぐ手に入るのは、最新の音声モデルを自分のマシンだけで動かし、いま見ているウィンドウにそのまま文字を打ち込む、無料のオフラインアプリです。

VoiceBoard編集部更新日 2026年9月2日

問題は精度ではありません。精度は何年も前に解決し、その後さらに良くなりました。問題は最後の数センチです。認識できたテキストをアプリから取り出し、目の前の入力欄まで届けるところで詰まります。Waylandではこの段階が失敗し、しかも何も言わずに失敗します。だから多くの人が「Linuxの音声入力は使えない」と結論づけるのですが、実際には文字起こしは完璧で、行き先がなかっただけなのです。

このページはその問題を軸に組み立てています。価格、バージョン、パッケージの中身は2026年8月27日に一次情報から読み取りました。

編集部の選択

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WaylandのGNOMEかKDEを使っているなら、つまり読者の大半に当てはまりますが、代わりにVocalinuxから始めてください。いちばん難しいケースに正面から取り組んだ唯一のプロジェクトで、コンポジタと戦うのではなくIBusを入力メソッドとして使います。これは日本語入力(Mozcなど)が通っているのと同じ経路で、漢字かな交じりの文章を渡すには相性のいい方式です。この記事を書いた当日にも更新されていました。

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編集部の推薦

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声だけでマシン全体を操る(X11セッションがまだ選べるなら)Talon無料
どの記事も薦めるが、私たちは薦めないnerd-dictation無料、GPL-3.0

何が変わり、なぜ他の記事は追いついていないのか

最近4つのことが動き、その結果、いま上位に出ている記事のほとんどが古くなりました。

CanonicalはUbuntuに音声入力を組み込もうとしています。2026年6月17日、Ubuntu Community HubにMynaの告知が出ました。「Ubuntu Desktopに音声からテキストへのディクテーションをもたらす新しい取り組み」と説明されています。ローカルモデルで動き、候補として名前が挙がっているのはWhisper、Nemotron、Qwen3-ASRで、「必要なモデルを入れてしまえばインターネット接続は不要」とされています。このうち日本語を扱えるのはWhisperとQwen3-ASRです。目標はUbuntu 26.10で、最初のリリースは「WaylandのUbuntu Desktopを対象とし、GNOMEを主要な検証環境とする」。ダウンロードを探しに行く必要はありません。canonical/mynaリポジトリは2026年6月5日に作られ、GPL-3.0で、今日の時点でリリースはひとつもありません。音声コマンド、デスクトップ操作、自動言語判別は最初のバージョンの対象外だと明記されています。それでも、このジャンルのまとめ記事が必ず書き出しに使う「Linuxだけは永遠に置いていかれる」という一文には、いま賞味期限がつきました。

TalonはLinuxから手を引こうとしています。Talonはコンピュータを声だけで動かす人にとっての答えでした。そのバージョン0.4.0の公式ドキュメントは、立場をはっきり書いています。「WaylandコンポジタにはTalonに必要なAPIがなく、Waylandへの対応予定はない」。ダウンロードページにあるのは「Linux (X11)」だけです。2026年5月31日、OSnewsはTalonが「X11の終息が続くなか、公開リリースからLinux対応をすべて間もなく削除する」と報じ、その技術的な言い分に異を唱えるKDE開発者の言葉も引きました。「WaylandにはTalonが動くのに必要なAPIがすべて実装されている。Talonの開発者がそれを使う気がないだけだ」。削除が実際に出荷されたのは確認していません。ここで旗を立てるのは、いちばん影響を受ける人ほど乗り換える余地がないからです。

「X11セッションでログインすればいい」は助言でなくなりました。いちばん多くのページを静かに無効にしたのがこれです。GNOME自身のリリースノートが3行で語っています。バージョン47でX11セッションを無効化できるようになり、2025年9月17日に出たGNOME 49では既定で無効になり、2026年3月18日公開のGNOME 50ではX11セッションを動かす機能そのものが削除され、ディスプレイサーバ固有のunitファイルも一緒に消えました。Fedora 43はディストリビューションの側でこれに続き、GNOMEのX11パッケージをリポジトリから削除して、該当する利用者をWaylandへ移しました。KDEはいまもX11セッションを提供しています。GNOMEは提供していません。つまり「ログイン画面でX11を選べ」と肩をすくめて書いている案内は、キーボードを使えない人がいちばん頼っているツールのインストール手順も含めて、読者のかなりの割合がもう実行できない指示を出していることになります。

この検索結果の一番上にいるツールは止まっています。2026年1月の短く誠実な記事はWhisperingを薦めていて、その位置は正当なものでした。筆者はその記事自体をこのツールで書き上げ、そう明記しています。ただ、その後の最終リリースは2025年12月27日のv7.11.0で、リポジトリのREADMEにはいま一字一句こう書かれています。「Whispering、vocab、skills、そしてEpicenterホストは現在ビルドが通りません」。古いバイナリは今もダウンロードできます。新しいものを作っている人がいないだけです。

なぜテキストが届かないのか

ここは他のどの記事も飛ばす部分で、そして本題です。

このジャンルでいちばん使われているHandyは、自分の課題管理に一行で書いています。「Waylandには、プログラムからテキストを挿入する統一APIも、グローバルホットキーを登録する統一APIも存在しない」。音声入力の両輪がそれぞれ別に壊れていて、Handyだけでこの件のオープンな課題を48件抱えています。

X11では、どのプログラムもXTEST拡張を通じてXサーバにキー入力の合成を依頼できます。1992年から標準に入っている仕組みで、自らを「入力デバイスイベントの限定的な合成。協力的な利用者がポインタを動かしたりキーを押したりしたのとほぼ同じ」と説明しています。xdotool typeがやっているのはこれです。どこでも、どのアプリでも、いかなる許可もなしに動きます。同時にそれは、あなたが起動したどのプログラムも銀行のサイトに文字を打ち込め、他のどのウィンドウに向かうキー入力も読めるということです。X11にはアプリ同士を隔てるという発想がありません。

Waylandはその穴を意図的に塞ぎ、制限版で置き換えることもしませんでした。「フォーカスのあるところにこれを打ち込め」という要求そのものが存在しません。Waylandのグローバルオブジェクトは呼び出し元が誰かを判別できないので、そこに出したものは全員に出したことになるからです。xdotool自身のREADMEが結論を端的に書いています。「文字入力、ウィンドウ検索、その他xdotoolの多くの機能は動作せず、将来動くようになるのかも不明である」。

そこで音声入力ツールはそれぞれ回避策を選び、どれも動く場所と動かない場所があります。現存するのは5通りです。

仮想キーボードプロトコル(zwp_virtual_keyboard_v1)。wtypeが使う方式です。作りが素直でUnicodeも安全に通せますが、実装しているのはwlroots系のコンポジタだけ。GNOMEは実装しないと明言しています。2021年のJonas Ådahl:「仮想キーボードプロトコルを我々が対応することはまずない。xdotoolやSynergyのようなものを扱う計画は、ポータル経由でlibeiを使うことだ」。2025年5月26日に追加要望を閉じたSebastian Wick:「そう、Waylandにはアクセス制御がなく、これを全クライアントに公開することになってしまう。同じことをする方法を複数抱えて保守し続けるのも持続可能ではない」。KDEも実装していません。2025年11月にUbuntu 25.10とKDE Plasmaで試した人が受け取ったエラーはそのままです。「コンポジタは仮想キーボードプロトコルに対応していません」。wtype自身の課題管理では2022年11月25日から#45として残り続け、wtype本体には2022年1月以降まともなコミットがありません。GNOMEかKDEを使っているなら、いくつの記事が挙げていようとwtypeは答えになりません。

カーネル経由(/dev/uinput)。ydotooldotoolが使う方式です。カーネルに仮想入力デバイスを作り、そこから打ちます。どのコンポジタでも、X11でも、TTYの中でさえ動く理由はひとつ、コンポジタよりにいるからで、コンポジタに口を挟む余地がありません。いちばん分かりやすい説明は、COSMICで音声入力を動かした2026年2月の記事にあります。ホットキーの検出もテキストの出力も「Waylandコンポジタよりも下のLinuxカーネルの層で動く」。

代償は、たいていの案内が一行で流してしまう権限で、本当はもっと丁寧に扱うべきものです。ydotoold/dev/uinputへの書き込み権限を必要とし、普通はudevルールを書いて自分をinputグループに入れることになります。ところがsystemdの既定ルールはすべての入力デバイスをそのグループに入れています。参加するということは、仮想キーボードを書けるようになるだけでなく、実在するすべてのキーボードの打鍵を、恒久的に、確認画面もなしに読めるようになるということです。コンポジタが仲介する権限を手放して、Waylandがまさに取り上げようとした能力を受け取る取引になります。やるのは自由ですが、分かったうえでやってください。

2つのツールの間には、誰も触れない品質の差もあります。ydotoolはカーネルの生のキーコードを送るだけで、公式ドキュメントも「利用者が独自のキーボードレイアウトを使っているかどうかを認識しない」と認めています。dotoolはlibxkbcommonを取り込んでいてレイアウトを理解します。日本語では、これは好みの問題ではありません。キーコードには漢字もかなも乗らないからです。US QWERTYで打てない文字は、キーコードを送るだけの方式では一文字も入りません。日本語を入れたいなら、キーマップを書き換えて任意のUnicodeを送れる方式か、そもそもキーコードではなく文字そのものを運ぶ方式を選ぶ必要があります。

入力メソッド(IBus)。キーボードのふりをするのではなく、そもそもアプリに文字を渡している仕組みそのものとして登録します。中国語や日本語の入力を処理しているのと同じ経路です。キーコードではなく文字を運ぶので、レイアウトは関係なくなります。VocalinuxがGNOMEとKDEで取っているのがこの道で、動いたときのなじみ方はこの中でいちばん自然です。日本語の読者にとっては、これが本命です。すでにMozcを載せているのと同じ土台であり、漢字かな交じりの文章をそのまま渡せる数少ない経路のひとつだからです。

クリップボードと貼り付けの同時押し。コピーしてCtrl+Vを送る。単純に聞こえますが、実際にはこの中でいちばん散らかった選択肢です。hyprwhsprの設定ガイドが、何がうまくいかないかの公開カタログとしていちばん優れています。端末ではCtrl+VではなくCtrl+Shift+Vが要る、だからツールは今どのアプリにいるのかを知る必要があるが、それもWaylandは教えてくれない、そこでGNOMEではアクセシビリティバスを使って調べにいく。EmacsはCtrl+Yを使い、Ctrl+Vはスクロールに割り当てている。Dvorakやbepoではvの物理キーコードはvではない。タイ語、ロシア語、アラビア語のレイアウトではvのkeysymを出すキーが一つもないので、ツールは入力ソースを一瞬ラテン系に切り替えて戻す。日本語入力をオンにしたまま合成キーを送ったときにどうなるかは、どのツールのドキュメントにも書かれていません。そしてGNOMEに限っては、Mutterがデータ制御系のプロトコルをどちらも実装していないため、クリップボードに文字を載せるにはサーフェスを開いてキーボードフォーカスを取る必要があり、つまり音声入力しようとしているアプリから一瞬フォーカスを奪うことになります。

libeiを使うデスクトップポータル。Waylandプロジェクトが本来意図している道です。アプリはダイアログを通じて一度だけデスクトップに許可を求め、その後は誰が送っているかをコンポジタが把握できる正規の経路で入力を送ります。これが正解で、そしてまだ完成していません。2026年5月15日公開のlibei 1.6.0までは、インターフェイスが運ぶのはキーコードとキーマップで、いま有効なレイアウトにない文字は音声入力ツールから打てませんでした。日本語にとってこれは「一部の記号が打てない」ではなく「一文字も打てない」を意味します。そのリリースでUTF-8のテキストを直接送るインターフェイスが加わり、問題は根本から消えました。ただ、まだ手元には届いていません。KDEはmasterにあるだけで、出荷は2026年10月のPlasma 6.8。GNOMEのマージリクエストは2026年3月24日から開いたままで、いまコンフリクトしています。

どれがどこで動くか

2026年8月27日に、プロトコルの対応表とコンポジタのソースツリーに当たって確認しました。表の「動く」は英数字が入るという意味です。日本語が入るかどうかは経路次第で、キーコードをそのまま送るydotoolでは漢字もかなも入りません。

使っている環境wtype(仮想キーボード)ydotool / dotool(uinput)IBus入力メソッドポータル + libeiクリップボード貼り付け
X11、デスクトップ問わず不要、xdotoolで足りる動く動く不要動く
WaylandのGNOME不可、今後も予定なし動く動くキーコードのみ、許可を何度も聞かれる動くがフォーカスを奪う
WaylandのKDE Plasma不可動く動く今はキーコード、文字はPlasma 6.8から動く
Sway、Hyprland、niri、river、Wayfire、labwc動く動く動くポータルの実装なし動く
COSMICプロトコルはあるが出力が壊れる動くあるツールで不具合の報告不明動く
上記の中のXWaylandウィンドウ不安定、長年の不具合動くレイアウトのずれの報告ありキーの組み合わせは可、Unicodeは不可動く

COSMICに一行を割くのは、このジャンルでいちばんよく記録された失敗例だからです。ここではwtypeはエラーを返しません。違うものを打ちます。2026年2月の記事は、「hello world」と言ったら84 101 108 108 111が返ってきたと書いています。キーコードそのものが数字として書き出されたわけです。しかもCOSMIC自身のspawnアクションから起動すると、wtypeは何のメッセージも出さずに失敗します。

もう一つ名前を付けておくべき罠。XWaylandは助け舟になりません。最近のXwaylandはXTESTの呼び出しをポータル経由に流せるので、X系アプリの中でもxdotool key ctrl+vは今も効きます。ただし生のキーコードを転送してコンポジタに解釈させるので、任意のUnicodeに届くためにキーマップを書き換えるというxdotoolの手が黙って捨てられます。有効なレイアウトの外にある文字をxdotool typeで打っても何も出ません。日本語はまるごとこの「外」に入ります。そしてwtypeをXWaylandのウィンドウに向けた場合は、2022年からChromiumやElectronのアプリに対して何度も報告されている別の長期不具合があります。

この状況にいちばん怒る資格があるのは、xdotoolを保守しているJordan Sisselでしょう。2025年11月に現状を試した彼は、GNOME 48が数分おきに「リモート操作を許可しますか」を出してきて恒久的に許可する方法がないことに行き当たり、こう書きました。「動くようにしたいのだが、これだけ断片化していると、どう進めればいいのか分からない。プロトコルが何であるかは気にしない。ただ、必要なことをやってくれるプロトコルがどれか一つでもあってほしい。続ける価値はあるのだろうか」。

何が壊れているかを1分で見分ける

音声入力が何もしていないように見えるときは、ツールを替える前にどちらの半分が壊れているのかを確かめてください。

  1. echo $XDG_SESSION_TYPEと打てばx11waylandかが分かります。ネット上の助言の半分はもう一方を前提にしています。
  2. テキスト欄にカーソルを置いてydotool type "hello"。「hello」が出れば注入は動いていて、問題は音声かモデルの側です。何も出なければ注入が問題です。日本語で使うなら、続けて同じコマンドで日本語の文字列も試してください。英数字だけ入って日本語が入らないなら、壊れているのはモデルではなく入力経路で、レイアウトを理解するdotoolか、文字をそのまま運ぶIBus経由のツールに替えるのが解です。
  3. groups | grep inputで、そもそもカーネル経由を使う資格があるかどうかが分かります。
  4. pactl list sources shortで、ツールが実際に録音しているのが自分のマイクかどうかが分かります。

この手順は、私たちのものを含めてどの比較表よりも価値があります。

そして、静かな失敗の形を知っておいてください。2026年の課題管理はこれで埋まっています。2026年7月15日に登録されたVocalinuxの課題#523の題は、アプリが「『テキストの注入に成功しました』と報告したのに、テキストはアプリに届かなかった」。2026年6月30日の課題#485は、「IBusが有効なときCOSMICやwlroots系コンポジタで何も言わずに何もしない」注入を報告しています。Spokenlyの課題管理も、2026年8月8日に登録された同じ種類の不具合から始まっています。音声入力の窓に緑のチェックが出ても、何かが打ち込まれた証拠にはなりません。

英語ではWhisperはもう最適解ではない。日本語では話が逆になる

このジャンルの記事はどれもWhisperを前提にしています。英語では、その前提は2025年のうちに賞味期限が切れました。日本語では切れていません。翻訳しただけの記事といちばん食い違うのがここです。

Hugging FaceのOpen ASR Leaderboardは公開されていて、再現でき、継続的に更新されています。2026年8月27日に読んだ時点で67件が載っていました。以下は、ここで挙げたツールが実際に積んでいるモデルの位置です。単語誤り率(低いほど良い)と、計算1秒あたり何秒ぶんの音声を処理できるかを示すRTFxを並べています。この順位は英語での測定であって、日本語の成績ではありません。

モデル順位単語誤り率速度(RTFx)
NVIDIA Parakeet TDT 0.6B v2185.885,998
OpenAI Whisper large-v3457.03はるかに遅い
OpenAI Whisper large-v3-turbo517.52large-v3より速い
Vosk、Kaldi、DeepSpeech、Coquiそもそも載っていない

Parakeetは最大のWhisperモデルより単語誤り率で1ポイント良く、速度はおよそ一桁上です。ノートPCのCPUでは、話し終えると同時に文字が出るか、気まずい間があってから出るかの違いになります。Handyはいま14系統69モデルを積んでいて、Parakeet、Canary、Moonshine、Nemotron、Granite、Qwen3-ASRが並び、Whisperはその中の一つの選択肢であってアプリの目的ではなくなりました。

ここから先が日本語の話です。英語向けの記事は「まずParakeetを試せ」で終わりますが、日本語ではその助言が逆になります。NVIDIAのParakeet TDT 0.6Bは、v2が英語のみ、v3が欧州25言語で、どちらの対応言語一覧にも日本語は入っていません。日本語の音声を食わせても何かは出ますが、それは中身のない出力です。日本語のベンチマークで誤り率が100%を超えたという実測もあります。同じ制約がCanary(欧州言語)とMoonshine(英語)にもかかります。日本語で選べるのはWhisper系(large-v3とlarge-v3-turbo)、Qwen3-ASR、そして中国語・日本語・韓国語・英語を狙って作られたSenseVoiceです。読み上げに近い音声ならWhisper large-v3は日本語でも十分に実用的で、2026年時点の日本語のローカル文字起こしの標準はここにあります。実務上の結論は2つ。第一に、日本語で使うツールを選ぶときは、モデル一覧にWhisper系かQwen3-ASRがあるかどうかを最初に見ること。Parakeetしか積んでいないツールは、英語向けにどれだけ評判が良くても日本語では候補になりません。第二に、Voskを土台にしているものは世代がひとつ古く、それはこのジャンルの記事の多くが2位に置いているツールも含みます。Voskには日本語モデル(大きい方で1GB、小さい方で48MB)がありますが、こちらも2022年世代のままです。

数字を正直に保つための但し書きをひとつ。同じモデルでもアプリが違えば同じ成績にはなりません。モデルを包むエンジンと、その後の後処理が違うからです。2026年6月に同一のParakeet V3を積んだ2つのアプリを比べた利用者が的確に書いています。「土台のParakeetモデルは同じだった。違いは周囲のエンジンと後処理などにあると思う」。順位表の順位は下限であって約束ではないと考えてください。日本語では、この後処理の差が漢字変換と句読点の付き方にそのまま出ます。

一覧

ツール向いている用途価格(2026年8月27日確認)エンジン音声はマシンの外に出るかどうやって入力するか
Handyほとんどのデスクトップで無料の音声入力無料、MIT14系統69モデル。Parakeet V2・V3、Canary、Moonshine、Whisperなど(日本語はWhisper系)出ないX11ではxdotool、Waylandではwtypeかdotool、Ubuntu 26.04ではydotool
VocalinuxWaylandのGNOMEとKDE無料、AGPL-3.0Vulkan対応のwhisper.cpp、Whisper、VOSK(いずれも日本語あり)出ないIBus。wlrootsではwtype、最後の手段としてクリップボード
Voicy設定を飛ばすために払う無料30分。月8.49ドル、買い切り260ドルクラウド専用。ベンダーはGroq上のWhisper V3と説明出る、クラウドへX11ではXTEST、Waylandではクリップボードと/dev/uinput
Speech Noteファイルの文字起こし、読み上げ、翻訳無料、MPL-2.0whisper.cpp、Faster Whisper、VOSK、April-ASR、Coqui(日本語はWhisperとVOSK)出ない「アクティブウィンドウに挿入」。Waylandではydotoolデーモンの常駐が必要
Voxtypeタイル型コンポジタでの押しながら発話無料、MITwhisper.cpp。ONNX経由でParakeet、Moonshine、SenseVoiceなど(日本語はWhisperかSenseVoice)出ないまずwtype、米国配列以外ではdotool、最後にydotool
Speed of Sound公式に認められたWayland経路無料、MITSherpa ONNX経由でWhisper、Parakeet、Canary(日本語はWhisperのみ)出ない。LLM整形を有効にした場合を除くXDGデスクトップポータル
Googleドキュメント音声入力文書ひとつ、何もインストールしない無料Google、クラウド出る、クラウドへ入力しない。文字はGoogleドキュメントの中に落ちる
Talon完全なハンズフリー操作無料。ベータはPatreonConformer D、デバイス上出ないX11のみ
nerd-dictation歴史的な答え無料、GPL-3.0VOSKのみ出ないxdotool、またはydotool・dotool・wtype

個別のツール

Handy

向いている人:ほとんどの人に、ほとんどの場面で。

価格:無料、MITライセンス、スター30,459、最終リリースはv0.9.6で2026年8月24日。

Handyは、キーを押している間だけ録音して、出来上がった文章をカーソルの位置に落とす小さなデスクトップアプリです。モデルのカタログは14系統69モデルまで増え、すべてローカルで動きます。Parakeet、Canary、Moonshine、Nemotron、Granite、Qwen3-ASR、Whisperなどが並びます。英語ならまずParakeet V3を試すのが定石で、公式ドキュメントもCPU最適化と自動言語判別を挙げています。日本語ならここはWhisper系かQwen3-ASRです。x86_64とARMのAppImage、.deb、2種類の.rpmが最新リリースに入っているので、たいていの環境ではダブルクリックで入ります。マシンの外には何も出ません。この種のツールの中では突出して使われていて、それには理由があります。

ここからが、宣伝ページには書かれていなくてドキュメントには書いてあることです。Handyは「Waylandディスプレイサーバへの対応は限定的」です。文字を流し込む補助ツールは自分で入れます。X11ならxdotool、Waylandならwtypedotool、既定でWaylandを使うUbuntu 26.04ではydotool。グローバルショートカットはアプリの中ではなく「デスクトップ環境側で設定する必要があります」。録音中のオーバーレイは「一部のコンポジタがそれをアクティブウィンドウとして扱う」ため無効の状態で出荷されています。そしてドキュメントは、Whisperのモデルが「特定のシステム構成でクラッシュする」ことも認めています。

どれも失格の理由にはなりません。2分の設定が20分になるというだけです。ただしWaylandのGNOMEかKDEなら、推奨されている補助ツールのwtypeこそが自分のコンポジタに拒まれるものなので、始める前に前の節を読んでください。日本語で使う場合はもう一段の条件が加わります。Ubuntu 26.04で推奨されるydotoolはキーコードしか送れないので、漢字とかなは出ません。日本語まで届かせたいなら、レイアウトを理解するdotoolか、文字をそのまま運ぶIBus経由のツールに寄せてください。

Vocalinux

向いている人:WaylandのGNOMEかKDEを使っている人。多くのツールがいちばん苦手とする領域です。

価格:無料、AGPL-3.0。スター783、v0.16.0を2026年8月23日に公開、ナイトリービルドは毎日出ています。

これはクロスプラットフォームのアプリにLinux対応を足したものではなく、Linuxから設計されたプロジェクトで、それが選択に表れています。キーボードのふりをするのではなく、GNOMEとKDEではIBus入力メソッドとして登録し、wtypeが本当に動くところではwtypeを使い、XWaylandのウィンドウにはxdotoolに落ち、他に何もないコンポジタにはクリップボード経由の道を持っています。これは上の表に対する正しい答えの組み合わせで、4つ全部を持っているツールは他にありません。日本語話者にとってIBusという選択はそのまま利点になります。Mozcを載せているのと同じ枠組みなので、漢字かな交じりの文章がキーコードに翻訳されずにアプリへ渡ります。

既定ではVulkanアクセラレーション付きのwhisper.cppを動かすので、AMD、Intel、NVIDIAのGPUがどれも使えます。VOSKやPyTorch版のWhisperに切り替えることもできます。インストールは対話式スクリプト、AURパッケージ、Flatpakビルド、またはpip install vocalinux。Python 3.11以降と、Ubuntu 24.04相当以降を求めます。日本語のモデルはwhisper.cpp側にもVOSK側にも用意があります。

正直な釣り合いとして:これは小さなチームの若いプロジェクトで、粗さは自分の課題管理を見れば分かります。2026年8月25日から開いたままの課題#738は、音声入力の途中でGNOME、IBus、XWaylandの間でキーボードレイアウトが同期しなくなると報告しています。8月10日の課題#664では、音声入力がブラジルのABNT2レイアウトを黙って米国配列に切り替えてしまいます。課題#485と#523は先に引いた静かな注入失敗です。日本語入力を併用する環境では、この種のレイアウトの取り違えは他人事ではありません。ウェブサイトの互換性表は主要なコンポジタをすべて「完全対応」としていて、これは課題管理が裏づける以上に自信のある書き方です。それでもGNOMEのWaylandならここから始めます。代わりの道は同じ作業を手でやることだからです。

Voicy

向いている人:プロジェクトではなく音声入力が欲しい人。

価格:カード登録なしで30分ぶんの録音が無料。Proは月8.49ドル、年払いで20%引き、そして買い切りライセンスが260ドル。チームは3席から1席6.79ドル。学生と障害のある人は20%引き。2026年8月27日に価格ページで確認しました。

買うとどうなるかを具体的に。ふつうのパッケージと同じように入れて、設定中にホットキーを選び、あとはどのウィンドウにいても話すだけで、句読点まで入った文章が出てきます。Firefox、VS Code、端末、Slackの入力欄、検索バー。ダウンロードするモデルもなく、GPUのことを考える必要もなく、補助デーモンの設定もありません。ydotoolの権限で一晩溶かしたことがあるなら、それがどれだけの価値かは説明が要らないはずです。

Linuxビルドが本物なのか、それとも表のチェック欄なのかを知りたかったので、実際に見に行きました。このジャンルで誰もやっていない部分です。3つのダウンロードはどれもHTTP 200を返し、しかも中身があります。.debが134MB、.rpmが119MB、AppImageが174MB。3つともLast-Modified2026年8月26日、私たちが確認した前日でした。.debの中のcontrolファイルにはVersion: 2.4.5Architecture: amd64、インストール後サイズおよそ465MBとあります。面白いのは依存関係の行です。libxtst6, libnotify4, libasound2, libappindicator3-1, wl-clipboard, gjslibxtst6はXTEST、X11の注入経路。wl-clipboardはWaylandの経路です。そしてインストール後スクリプトが残りをコメントで明言しています。「VoicyのWayland貼り付け注入器が開けるように、現在のユーザーに/dev/uinputへの書き込み権を与える」ため、uinputモジュールを読み込み、uaccessタグ付きのudevルールを書き、inputグループがなければ作ります。AppImageの利用者は実行時のpkexecの確認画面で同じことをします。自前のaptリポジトリも足すので、システムの他の部分と一緒に更新されます。

そのスクリプトの一点は評価に値します。たいていの手順書が薦めるやり方より良いからです。udevルールにはuaccessタグが付いていて、その席にログインしている人にACLを渡し、対応していないシステムではグループを代替として使います。つまり恒久的にinputグループへ入れられるわけではなく、副作用としてすべてのキーボードの打鍵を読めるようになったりもしません。合成した入力を書く能力だけを与えて、そこで止まります。取引としては、より狭くてより正しい形です。

まとめると:ydotoolと同じやり方でWaylandを解いているElectronアプリで、Linuxでの価値のすべては、特権の設定をwikiページに丸投げせず代わりにやってくれることにあります。それは対価を取っていい仕事です。魔法ではありませんし、これは別次元の技術だと言ってくる相手は何かを売っています。

限界を2つ、率直に。オフラインモードはなく、パッケージがそれを証明しています。Voicy自身の比較表に「オフラインで動作:いいえ」とあり、ダウンロードの中にローカル推論の成果物は一つもありません。ggmlの重みもONNXもwhisper.cppもない。入っているのはハードコードされたWebSocketの接続先、wss://us.usevoicy.comwss://eu.usevoicy.comです。セキュリティ文書は経路を説明しています。音声はあなたのマシンから米国のHeroku上のVoicyのサーバへ行き、「オープンソースのWhisper V3文字起こしモデルをホストしているGroq.comへ直ちに転送」され、どちらも保存しない。このモデル名はベンダー自身の説明であって外から検証できたものではありませんが、もし正しいなら、あなたが払っているのは配管と速度の代金で、無料のツールがローカルで動かすより良いモデルの代金ではありません。日本語の認識を受け持つのも同じWhisper V3なので、精度の土俵は無料のローカルWhisperと同じです。無保存は本物の、意味のある方針です。それでも、声が部屋の外に出ないことと同じではありません。

2つめ。実機のデスクトップでは試していません。読んだのはパッケージであって、体験ではありません。とくに、Ctrl+Vが貼り付けではない端末でクリップボード経由の貼り付けがどう振る舞うかは分かりません。日本語入力をオンにしたままのときの挙動も同じく未確認です。

宣伝ページにある99%超という精度の数字はベンダー自身のもので、私たちを含め誰も検証していません。

Voicyを見る

Speech Note

向いている人:録音を文字にしたい人、そして他がどこも対応しない言語を使う人。

価格:無料、MPL-2.0。スター1,610、確認した当日にもコードが更新されていました。デスクトップ版の現行リリースは2026年4月15日の4.8.4。4.9.0は存在しますが出荷されたのはSailfish OS向けだけで、デスクトップ版は後日と告知されています。

Speech Noteはまずノートアプリで、音声入力ツールとしては二番目です。そして最初の仕事だけでも持っておく価値があります。42言語にまたがる146の音声認識モデルを抱え、Vosk、Whisper、Faster Whisper、April-ASR、そして古いCoqui STTの5つのエンジンに分かれています。日本語はVoskとWhisperの側でまかなえます。読み上げとオフラインの機械翻訳もできます。すべてローカルで動きます。「データはインターネットに送信されません」。Flathubから、あるいはAUR、openSUSE Packman、Sailfishを使っているならOpenReposから入ります。ディスクは見ておいてください。Flatpakの全部入りはダウンロードで約1GiB、インストール後3.6GiB。Tiny版なら48MiBです。

「アクティブウィンドウに挿入」というモードもあるのでシステム全体の音声入力としても使えますが、ドキュメントはWaylandでの代償を具体的に書いています。「動作させるには外部のydotoolデーモンがインストールされ動いている必要があります。Flatpakを使う場合は、アプリケーションがydotoolデーモンのソケットファイルにアクセスできる権限も確認してください」。日本語では、この経路がそのまま制約になります。ydotoolはキーコードを送るだけなので、挿入先に漢字とかなは届きません。

正直な限界はモデルの世代です。あのライブラリは2025年以前の顔ぶれで、ParakeetもCanaryもNemotronもありません。日本語にとっては痛手がむしろ小さく、その3つはそもそも日本語に対応していないからです。言語の幅ではここに並ぶものがありません。英語の生の精度では、Parakeetを積めるツールが勝ちます。

どこに置くか:インタビュー録音のフォルダが仕事なら、あるいはWhisperのラッパーが考えていない言語なら、これがLinuxで最も強い無料の選択肢で、それも僅差ではありません。一日中Slackに打ち込むのが仕事なら、押しながら発話するタイプのアプリの方が快適です。

Voxtype

向いている人:Sway、Hyprland、niri、river、そして設定ファイルが好きな人。

価格:無料、MIT。スター1,270、最終プッシュは2026年8月25日。

Voxtypeは、明らかにタイル型コンポジタを使っている人が作った、押しながら発話する道具です。既定でwhisper.cppを動かし、ONNX経由でParakeet、Moonshine、SenseVoice、Paraformerなどに差し替えられます。すべてローカルで、CPUで実時間の9倍から11倍を謳います。AUR、.deb、.rpm、AppImage、Homebrew、cargoで配布。glibc 2.38以降と、利用者がinputグループにいることを求めます。日本語で差し替えるならSenseVoiceが候補です。中国語、日本語、韓国語、英語を狙って作られたモデルで、ParakeetやMoonshineと違って日本語が対象に入っています。

別枠で名前を出す価値があるのは、上の表について正直だからです。まずwtypeを試し、キーボードレイアウトが米国配列でなければdotoolに切り替え、X11とTTYではydotoolに落とします。公式ドキュメントも、KDEとGNOMEではwtypeは非対応でdotoolかydotoolが要ると明記しています。この一文は、いま上位に並ぶまとめ記事のWayland解説すべてより役に立ちます。日本語で使うなら、この切り替えの順番がそのまま効きます。ydotoolまで落ちた時点で日本語は入らなくなるからです。

Speed of Sound

向いている人:巧い抜け道ではなく、公式に祝福された経路が欲しい人。

価格:無料、MIT。スター197、最終プッシュは2026年7月13日。

このリストで唯一、Speed of SoundはXDGデスクトップポータル経由で文字を打ちます。Waylandプロジェクトがこの用途に本来使ってほしいと考えている仕組みです。inputグループも、udevルールも、仮想キーボードプロトコルの当たり外れもありません。文字起こしはSherpa ONNX経由でローカルに行い、Whisper、Parakeet、Canaryが選べます。この中で日本語が使えるのはWhisperだけです。LLMによる文章の整えも任意で付いていて、建物の外に出したくなければ自前のOllamaやllama.cppに向けられます。Flathub、Snap、AppImage、.deb、.rpm。

一番手に選ばなかった理由は勢いです。HandyやVocalinuxより若く小さく、オープンな課題が61件あり、リリースの間隔も静かで、ポータルの対応具合もデスクトップによってまだ差があります。ただ設計としてはこのジャンルが行き着くべき場所で、しかもポータル経路は日本語にとって重要です。libei 1.6.0以降ならUTF-8のテキストをそのまま送れるので、キーコードの壁がなくなるからです。ポータル経路が気になるなら、これを最初に入れてください。

ChromeのGoogleドキュメント音声入力

向いている人:文書ひとつ、ソフトを入れられないマシンで。

価格:無料。

ChromeでGoogleドキュメントを開き、Ctrl+Shift+Sを押して話す。Googleのヘルプページは要件を「最新版のChrome、Edge、Safari」と挙げ、およそ80の言語と方言に対応しています。日本語も対象です。スライドでは発表者ノートと字幕で使えます。ただしそのページにLinuxは載っても除外されてもいないので、公式対応ではないが動く、と受け取ってください。

制約は全面的で分かりやすいものです。言葉はGoogleドキュメントの中に落ち、他のどこにも行きません。小論文なら、あるいは管理された社用ノートPCや図書館の共用機なら、それは妥当な取引で、費用もかかりません。日常的に使うと、木曜日あたりで貼り付け作業に飽きます。それに声はGoogleへ送られるので、この記事の読者の一部にとってはその時点で話が終わります。

Talon

向いている人:手を使わずにコンピュータ全体を操りたい人。X11に留まれるなら。

価格:ダウンロードは無料。有料のPatreon階層でベータビルドと優先サポートが開きます。

Talonは音声入力アプリではなく、ハンズフリーの入力システムです。音声コマンド、音を出すとクリックになるノイズ操作、視線追跡、そして好きな動作を定義できるPythonスクリプト。音声エンジンのConformer Dは自分のマシンで動きます。打鍵が痛くて声でコードを書く人にとって、これが何年も答えであり続けてきましたし、このリストの他のどれも同じことをしようとしていません。ただし操作の語彙は英語です。コマンドもスクリプトも英語の発話を前提にしているので、日本語話者にとっては「日本語の文章を書く道具」ではなく「英語のコマンドでマシンを操る道具」になります。

学ぶのに数週間かかる投資をする前に、状況をよく読んでください。

ダウンロードページにあるのは「Linux (X11)」です。バージョン0.4.0のドキュメントはこう書いています。「WaylandコンポジタにはTalonに必要なAPIがなく、Waylandへの対応予定はない」。2026年5月31日、OSnewsは公開リリースからLinux対応がすべて削除されると報じ、その理屈に反論するKDE開発者の言葉を引きました。「WaylandにはTalonが動くのに必要なAPIがすべて実装されている。Talonの開発者がそれを使う気がないだけだ」。

残りを文脈に置く事実もあります。公開されている3つのダウンロード、Linux、macOS、Windowsのヘッダをすべて確認しました。どれもLast-Modified: 24 July 2023です。公開されている安定版はどのプラットフォームでも3年前のもので、Linuxだけの話ではありません。活発な開発は有料のベータ側にあります。それはプロジェクトの正当な運び方ですが、無料ビルドの上に日々の作業を組み立てる前に知っておく価値があります。

そしてここからは、気まずいでは済まない話になります。Talonのインストール手順にはこうあります。「Talonは、自動化やアクセシビリティのための多くのツールと同じく、Waylandに対応していません。ログインマネージャからX11セッションを選ぶ必要があります」。2026年3月のGNOME 50以降、ログインマネージャに選ぶべきX11セッションは存在しません。キーボードを使えないから声でコンピュータを動かしているGNOMEの利用者にとって、文書化された回避策が自分のマシンから消えたということです。このジャンルでTalonがやっていることに挑んでいるものは他にないので、長所と短所の一覧に畳み込まずにはっきり書く価値があります。

音声入力ではなく音声操作が必要で、すでにWaylandにいるなら、numenを見てください。同じ仕事を狙った自由ソフトウェアで、/dev/uinput経由で打つのでX11でもWaylandでもTTYでも同じように動きます。Talonより小さなものです。同時に、動くものでもあります。

nerd-dictation

向いている人:2026年においては、誰にも。それでもどの記事にも載り続けています。

価格:無料、GPL-3.0。スター1,913。

これはこのジャンル全体が薦めるツールで、かつてはその資格がありました。依存関係のほとんどないPythonファイル1枚で、VOSKをxdotoolに流し込むもので、Linuxの音声入力が可能に思えた最初のものでした。作者は取引の中身についても率直で、READMEには、このツールへの苦情の大半を説明する一文が入っています。「VOSKからのテキストはすべて小文字です」。この制約は日本語には関係ありません。日本語に大文字と小文字がないからです。ただし土台の問題は残ります。

足元で2つのことが変わりました。最終コミットは2025年10月10日、およそ10か月前で、オープンな課題は83件、Waylandとキーボードレイアウトに関するものはいくつも2021年から開いたままです。そしてVOSKはもう競争力がありません。Open ASR Leaderboardには載ってすらおらず、最終リリースは2024年4月のv0.3.50、精度はきれいな音声から外れると崩れます。英語の小さいモデルはきれいな読み上げ音声で単語誤り率9.85%前後、大きいモデルはコールセンターの録音で29.78%に達します。2026年1月にArchとWaylandで作業していた開発者が実際の結果を書いています。Voskは「散発的な幻覚を出す。無音のあいだにランダムに『the』や『there』を出力した」。句読点が言葉そのままで出てくることも合わせて、彼は「Voskは丸ごと避けろ」と結論しました。日本語モデル(大きい方1GB、小さい方48MB)は用意がありますが、こちらも2022年世代のままで、日本語では大文字小文字ではなく漢字変換の質がそのまま読みやすさになります。

これを土台に何かを配るつもりなら、もう一つ知っておくべきこと。Voskのモデルはライセンスが一様に緩いわけではありません。vosk-model-small-fr-pguyot-0.3はCC BY-NC-SAで商用利用を禁じ、vosk-model-fr-0.6-lintoはAGPLです。ツールキットではなく、使う個別のモデルのライセンスを確認してください。

すでに動かしていて満足しているなら、ここに書いたことで乗り換える義理はありませんし、Elografが保守されたGUIを付けてくれます。まとめ記事に言われて今日から始めようとしているなら、別のところから始めてください。

声はどこへ行くのか

Linuxの読者にとってこれは脚注ではないので、平たく書きます。

音声がマシンから出ないもの:Handy、Vocalinux、Speech Note、Voxtype、Speed of Sound(LLMによる整えを有効にした場合を除く)、Talon、nerd-dictation。

音声がサーバへ行くもの:Voicy、Googleドキュメントの音声入力、NovaVoice。

この欄は二度読む価値があります。上のリストで声を家に留めるツールはすべて無料で、すべてオープンソースです。WindowsやmacOSではそうなっていません。このジャンルでこのプラットフォームが持つ最大の強みがここにあります。ローカル処理こそがLinuxを使う理由なら、妥協する必要も、お金を払う必要もありません。日本語でも事情は同じです。Whisper系のモデルは日本語を扱えるので、無料でローカルという組み合わせがそのまま成り立ちます。

Linux特有のプライバシーの問題がもう一つあり、これを正しく枠づけている記事がありません。ここでWayland対応をうたうツールの多くが必要とする/dev/uinputへのアクセスを音声入力アプリに与えると、入力を合成する能力以上のものを渡すことになります。systemdの既定ルールが入力デバイスをまとめている都合上、inputグループに入るということは、あなたの権限で動くあらゆるものが、マシンにつながった物理キーボードすべての打鍵を読めるということでもあるからです。それはWaylandが意図的に取り除いた能力そのもので、インストール手順の一行で返ってきます。ツールがそれを求めるのは、まだ他に普遍的な選択肢がないからで、出口はポータル経路です。Speed of Soundのやり方を、アプリが小さくても評価しているのはそこに理由があります。Voicyのパッケージのように、グループに入れるのではなくuaccessのudevタグで設定するツールがあれば、それはより狭い形の権限を求めているということで、選ぶ理由になります。

公平を期すなら、KDE Plasmaにも誰も塞いでいない穴があります。KWinはいまも旧来の疑似入力プロトコルを、条件なしにすべてのWaylandクライアントへ公開していて、その認可関数は中身のない実装で、要求を承認する行の上に// TODO: make secureというコメントが乗っています。PlasmaのWaylandでは、あなたが起動したどのアプリケーションも確認画面なしにキー入力を注入できます。これはKDEに反対する論拠ではなく、セキュリティのページではなくソースを読めという論拠です。Voicyのパッケージを宣伝文句ではなく中身で確かめたのも同じ理由です。

そしてこのページのWhisper系ツールすべてに当てはまる警告をひとつ。Whisperは無音で幻覚を起こします。何も言っていないのに、ときどき無関係な一文を出します。Vocalinuxの課題#331(2026年3月18日)でも追跡され、広く不満が出ている挙動です。日本語ではこの幻覚の中身が変わります。英語で有名なのは「Thank you」ですが、日本語で出てくるのは「ご視聴ありがとうございました」のような、動画の締めの決まり文句です。学習データに大量のネット動画が入っていることの副作用で、選んだアプリの不具合ではなくモデルの性質です。

何を確認し、何を確認しなかったか

精度のベンチマークは実施していませんし、実施したかのように書くつもりもありません。

この分野についての事実を一つ。他の誰もやっていません。これらの検索語で上位に出る記事をすべて読みましたが、測定された数字は一つもありませんでした。単語誤り率もなく、遅延もなく、メモリの数字もなく、計測時間もなく、画面の写真もほとんどない。比較表にはどれも「精度」の欄があり、どの表のどのセルも形容詞です。しかもそれは二重に空虚です。同じParakeet V3を動かす2つのアプリが、エンジンと後処理次第で目に見えて違う結果を出すのですから。

そこで数字を作る代わりに、すでに存在して再現もできる数字を公開のOpen ASR Leaderboardから取ってきて、それ以外の確認できることは一次情報に当たりました。2026年8月27日に行ったのは以下です。

ごまかさずに旗を立てておくことが2つ。これらのツールを実機のデスクトップに入れて使ってはいないので、ここにあるコンポジタの表はドキュメント、課題管理、日付のある他人の実機報告から組み立てたもので、自分のマシンの結果ではありません。そしてRedditは私たちの作業環境から到達できないので、このページのコミュニティの声はすべて読者が開けるところから来ています。

検討して外したもの

目を通したうえで載せなかったツールと答え、そしてその理由です。

Wispr Flowは、Linuxを使う人がこのジャンル全体でいちばん多く検索する名前で、答えは「使えない」です。ドキュメントは対応デバイスを「Mac、Windows、iOS、Android」と挙げ、そのうえでこう書いています。「iPad、Linux、Chromebook、および仮想マシンやリモートデスクトップ環境は対応していません」。別のヘルプ記事はもっと直截です。「ネイティブのLinuxアプリケーションはありません」。WindowsやMacをホストにしてWSLや仮想マシンでLinuxを動かしているなら、Flowはホスト側からそこへ貼り付けられます。Linuxの話はそれで全部です。

非公式のWispr Flow再パッケージwispr-flow-linuxという名前で存在し、スターは100程度で、ElectronアプリにクリーンルームのRust製の補助ツールを組み合わせています。Wisprが macOSとWindowsにしか載せていないテキスト注入を作り直したものです。--doctorコマンドまであってセッション種別と/dev/uinputへのアクセスを点検してくれるので、どこが難所だったのかが分かります。名前を挙げるのは、探せば見つかるからであって、薦めているからではありません。他人のプロプライエタリなアプリケーションを再パッケージするものであり、目を開けたまま決めるべきことです。

Superwhisper、VoiceInk、Aqua Voice、Typelessはどれも「linux」を付けて検索されますが、Linuxビルドはひとつもありません。VoiceInkはApple SiliconのmacOS専用です。

Wine上のDragon NaturallySpeakingはこのジャンルで最も古い答えで、期待どおりに動いたことは一度もありません。議論ではなく決着をつける場所であるWineHQのアプリケーションデータベースは、Dragon 13、15 Home、15 ProfessionalをいずれもGarbageと評価しています。どのバージョンでも最良の評価はSilverで、それは12.5、しかも廃止扱い、最終テストは2021年1月27日です。そのうえその項目には、この案を終わらせる一文が入っています。「音声入力はwine環境の内側でのみ動作する... テキストは切り取ってどのアプリケーションにも貼り付けられる」。つまり最良の場合でも、10年以上前のバージョンで、Windowsのウィンドウに向かって話し、そこから貼り付けるということです。ただ記録には公平に、2022年以降、現行のWineでDragonを再テストした人はいないので、「今は動かない」は測定ではなく推測です。実際に採用された回避策はWindows仮想マシンからソケットでテキストを中継するもので、2023年にHacker Newsで作った経緯を書いた開発者がいます。Dragonの検索からここに来たなら、ローカルのWhisperに行ってください。日本語ではParakeetではなくWhisper系が答えです。一発目の精度に驚くはずですし、費用はかかりません。

Buzzはスター21,162で、この種のリストに絶えず出てきます。ファイルとマイク入力を自分のウィンドウの中に文字起こしします。フォーカスのあるアプリに打ち込む機能はなく、誰も要望していません。自分の仕事には優れていますが、それはこのページの仕事ではありません。

Wsprは14.99ドルの買い切りで、ローカルのwhisper.cppと.debが付いてきて、理想的に聞こえます。要件を読むまでは。XWayland経由のxdotoolで打つ方式で、公式ドキュメント自身が「純粋なWayland構成にはまだ対応していません」と書いています。安く、正直で、そして読者の大半の構成には向きません。

Spokenlyは、本当に無料のローカル階層を自前の鍵で使えること、Proが年99.99ドルであること、そしてベンダーのブログとしてはいちばん整理されたWaylandの節を持っていることで、名前を挙げる価値があります。同時に2026年8月8日に登録されたオープンな課題があり、COSMICでオーバーレイがフォーカスを奪うため対象アプリに貼り付けられないと報告されています。自分がまだ直しきれていない問題の解決策を売っているわけです。

NovaVoiceはLinuxクライアントを持つもう一つの商用アプリで、Ubuntu 20.04以降、Debian、Fedora向けの.debとAppImageがあり、月10ドルです。クラウド専用で、LinuxのページにはX11ともWaylandとも一言も書かれていません。このジャンルではそこが全問題だというのに。

Simon、CMU Sphinx、Julius、IBM ViaVoiceは今年公開されたまとめ記事にも登場します。出典の大半が2012年のもので、Waylandという語がどこにも出てこないWikipediaのページから写されているのです。ViaVoiceは2002年に市場を去りました。DeepSpeechは2020年12月のv0.9.3以降アーカイブされています。Coqui STTは自分のREADMEに墓碑銘を書きました。「このプロジェクトはもはや活発に保守されていない... Whisperのような新しいSTTモデルへ関心が移ったのを見てきた」。背後の会社は2024年1月3日に閉じました。Kaldiだけは例外で、いまもコミットは続いていますが、認識器を作るための研究用ツールキットであって、メールを口述するために入れるものではありません。どれもASRの順位表には載っていません。これらを音声入力アプリとして薦める記事は読み飛ばしてください。残念ながらそれは、このページより上に並ぶいくつかの記事を読み飛ばすことを意味します。

Whisperingには同情と留保があります。良いツールで、本物のファンがいて、このジャンルの最上位の記事はこれを使って自分自身を口述しました。上流のリポジトリはいま、ビルドが通らないと書いています。2025年12月27日のバイナリは今も問題なく入るので、欲しければどうぞ。

Mynaを推薦に入れないのは、インストールできないからです。Ubuntu 26.10でまた来てください。

ラッパーの群れはもう産業です。OpenWhisprはスター5,781、OpenLessは3,334、hyprwhsprは1,176、そしてDicteeはスター56と小さいながら、この山の中でいちばん面白い設計です。Wayland前提、KDEのプラズモイド、既定でParakeet TDT v3、evdev経由のレイアウトを理解する注入。その先にもSotto、VOXD、Blurt、whisrs、lokstt、hyprvoice、waystt、LinuxWhispr、Vibe Typerがあり、毎月増えています。いくつかはWispr Flowが欲しかったのに手に入らなかった人が書いたものです。本当に良いものもあります。私たちはひとつずつ試したふりをせず、カテゴリとして名前を挙げるにとどめます。探検したいならオープンソースの音声入力ガイドがさらに深く、私たちが扱う全体像はパソコンの音声入力アプリにあります。なおDicteeの既定モデルは日本語に対応していないので、日本語で試すならモデルの差し替えが前提になります。

探検するあいだに備えておくべき型がひとつ。有料のLinux音声入力アプリのうち少なくとも3つが、それぞれ自分を「Linux唯一の」有料音声入力アプリだと説明しています。互いのブログを引用し合っているのです。主張ではなく、ダウンロードページを確認してください。

よくある質問

WindowsやmacOSのように、Linuxにも音声入力は最初から入っていますか

いいえ。今日の時点で、どの主要デスクトップにも、どのディストリビューションにもありません。ドキュメントではなくアクセシビリティの設定画面そのものを確認しました。GNOMEの入力支援のページにあるのはスクリーンキーボード、カーソルの点滅、キーのリピート、固定キー、スローキー、バウンスキーで、音声入力、音声、ディクテーションという語はどこにも出てきません。KDEのアクセシビリティモジュールも同じです。Orcaはスクリーンリーダーで、これは音声が出ていく方であって入ってくる方ではありません。いちばん明確な裏づけは、Canonicalが2026年6月17日に音声入力を「新しい取り組み」としてUbuntu 26.10向けに発表したことと、2026年6月にGNOME自身のフォーラムに出たデスクトップ全体の音声入力の提案が、保守者から何の約束も引き出せず、サードパーティ製ツールへの案内だけで終わったことです。

正しく認識されているのに、テキスト欄に何も出てこないのはなぜですか

認識と入力は別々の仕事で、Waylandでは後者が設計として制限されているからです。使っているツールはたぶんwtypeを使っていて、それはGNOMEのMutterとKDEのKWinが実装していないプロトコルを必要とします。GNOMEの場合は実装しないと公に表明もしています。テキスト欄にカーソルを置いてydotool type "hello"で注入経路そのものを試してください。何も出なければ問題はモデルではなく注入です。レイアウトを理解するdotoolに切り替えるか、IBusかデスクトップポータルを通るツールを使ってください。日本語ではもう一段あります。英数字は入るのに日本語だけ入らない場合、原因はキーコードを送る方式そのものです。漢字とかなはキーコードに乗らないので、IBus経由のツールに替えるのがいちばん確実です。

Wispr FlowはLinuxで動きますか

いいえ。ドキュメントはLinuxが非対応であること、そして「ネイティブのLinuxアプリケーションはありません」と述べています。同じ使い心地を探しているなら、無料でいちばん近いのがHandy、有料でいちばん近いのがVoicyです。

声をどこにも送らずにLinuxで音声入力できますか

できます。ここはこのプラットフォームの得意分野です。Handy、Vocalinux、Speech Note、Voxtype、Speed of Sound、Talonはどれも認識を自分のハードウェアで行い、どれも無料で、どれもオープンソースです。Whisperのモデルは約75MBから数GBまであり、中くらいのものはCPUでも実用的な速度で動きます。日本語もWhisper系のモデルで問題なく扱えます。このページで音声をサーバへ送るのはVoicy、NovaVoice、Googleドキュメントの音声入力だけです。

Linuxで無料の音声入力なら何がよく、どのモデルを動かすべきですか

X11か、SwayやHyprlandのようなwlroots系コンポジタならHandy。WaylandのGNOMEかKDEならVocalinuxです。自分のコンポジタが拒むプロトコルではなくIBusを使うからで、これは日本語入力が通っているのと同じ経路でもあります。録音を文字起こしするのが仕事ならSpeech Note。3つとも無料でオープンソースです。モデルについては、英語向けの記事は「WhisperよりParakeet」と書きますが、日本語ではそのまま受け取らないでください。Parakeet TDT 0.6Bはv2が英語のみ、v3が欧州25言語で、日本語は対象外です。日本語で選ぶのはWhisper large-v3かlarge-v3-turbo、あるいはQwen3-ASRやSenseVoiceです。そしてWhisper系のツールに共通する癖をひとつ。無音を渡すと、モデルはときどき文を作ります。日本語では「ご視聴ありがとうございました」のような動画の締めの言葉が出てきます。これは設定の問題ではなくモデルの性質です。

価格、バージョン、パッケージの中身、プロジェクトの活動状況は、ベンダーのページ、公式ドキュメント、GitHub API、そしてパッケージそのものから2026年8月27日に読み取りました。このページは四半期ごとに、Ubuntu 26.10が出たらそれより早く読み直します。

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